作家テキスト(自然のなかで展より)
ひとすじの蜘蛛の糸に行きあたる夜、
その手強いひとすじに悩まされる。
見えないほど細く強靱なそれは
手際よく作り上げられ 明日を導く用意となる。
毎日の丹念な継続、静かなくり返し。
印象的な光とともに、星は古くの時を知らせる。
ここに光が届くまで
どれだけ時間を費やしているのか。
光の知らせは人の歴史を難なく越える。
時をもたらすその星は
今もその場所で変わらぬ輝きを持つのか。
手指に傷を作り、その、ほんの小さな切り口が
体中に刺激を伝える。
心臓がそこに降りてきて、痛みと鼓動が同調する。
いつもは息をしていることさえ忘れているというのに、
こんな時ばかり体の流れを意識する。
時おり生まれる些細な混乱。
ものごとのひとつひとつの痕跡は、
点となって時間を作る。
使われた涙や 穏やかな記憶、
鮮やかな、静かな光景とともに時は作られる。
その日を作り、その人を作る。
それぞれがいつもの時間を思い起こすとき、
周りのものごとと 時を共有する。
誰もが、大切なものを自分で選ぶことができる。